NAP策定への意見:性的指向・性自認

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • 日本では、性的指向・性自認について、2017年の内閣府「人権擁護に関する世論調査」において「差別的言動をされること」が5割近くにのぼることをはじめ、いじめや嫌がらせ、差別的取扱いなどについて、民間も含めた各種統計データから明らかになっている。
  • このような状況にもかかわらず、性的指向・性自認による差別を禁止する法律はもとより、性同一性障害の性別変更に関する法律以外には、直接関係する法律が存在しておらず、政府の窓口となる担当省庁も存在していない。確かに、法務省の人権啓発については既に15年近く実施されているが、公人やメディアにおける暴言や差別的言動は後を絶たず、関係する訴訟なども相次いでいる。
  • 東京オリンピック・パラリンピック競技大会の実施をにらみ、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では「持続可能性に配慮した調達コード」が策定されており、性的指向・性自認による差別やハラスメントの禁止が盛り込まれている。また、開催地となる東京都も、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を制定し、第四条で「性自認及び性的指向を理由とする不当な差別的取扱いの禁止」規定を設けている。加えて、日本の主要な労使団体も差別禁止を掲げ、日本学術会議も差別禁止法の制定を提言するなど、差別禁止に向けた取り組みは、各分野に広まりつつある。国においても早急な差別禁止法の制定が求められている。

【NAPへの提言】

  • 性的指向・性自認に関する差別的取扱いを禁止する立法が必要であることをNAPに明記すべきである。この法律には、差別的取扱い禁止条項だけでなく、ハラスメント防止措置や、合理的配慮義務も加えるとともに、基本法的な性格を付与し、行政の体制整備を規定すべきである。

性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等

に対する法整備のための全国連合会課〔LGBT法連合会〕