NAP策定への意見:公共調達

ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書

(2020年1月23日)

【現状と課題】

  • ビジネスと人権を推進する上で、公共調達政策への関心が高まっている。日本の政府調達額は2012年以降16%を超える規模になっており、市場への影響力は甚大である。
  • ビジネスと人権に関するものとして、日本の全府省庁では、コンプライアンス義務を遵守させるため、会計法令に基づき法令厳守条項等が契約に盛り込まれている。総合評価落札方式においては、「くるみん(次世代育成支援対策推進法)」、「えるぼし(女性活躍推進法)」認定企業への優遇措置の実施や、障害者優先調達推進法の施行に基づく障害者就労施設等からの物品等の調達推進を行っている。
  • 自治体においては、総合評価一般競争入札において、福祉、男女共同参画、公正労働、地域貢献などの社会的価値を導入する動きが少しずつ広がっている。また東京都が2020年に主催するオリンピック・パラリンピック競技大会に向けて「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則った持続可能性に配慮した調達コードとその担保方法のひとつとして苦情処理メカニズムが作成されている。
  • 課題としては、これらは地域、物品や事業等に限定されており、「環境、経済、社会」の持続可能性を包括的に考慮した調達基準が策定されていない。

【NAPへの提言】

  • 「国連ビジネスと人権に関する指導原則」に則った公共調達のあり方を政策方針として明示する。
  • ILO94号条約(公契約における労働条項に関する条約)の批准が労働者の権利保護にとって重要であることとともに公契約条例の促進について言及する。
  • サプライチェーンにおける人権状況(強制労働、児童労働の禁止、差別禁止、労働条件、職場環境、労働者の健康への配慮など)をチェックする基準枠組づくりに言及する。
  • 公的資金が使われる事業での人権保護体制と手続きの確保を契約の中で明示し、実行を監視できるようにする。
  • 調達先企業の、特に中小企業への支援を拡充する。
  • 東京オリパラの調達コードと苦情処理メカニズムを大会後にレガシーとして、政府・公共調達に取り入れることを検討する。

一般財団法人CSOネットワーク