ビジネスと人権に関する行動計画(NAP)策定への市民社会からの意見書
(2020年1月23日)
【現状と課題】
- ILOの推計(2017年)によると、世界の児童労働者数は1億5200万人、そのうち高所得国には200万人と報告されている。SDG 8.7において「2025年までの児童労働撤廃」が目標として掲げられているが、その達成は厳しい見通しで、各国における取り組みの強化が求められている。
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児童労働への取り組みとしては、従来の各国での法整備・法執行や社会福祉政策だけでなく、サプライチェーンを通じた企業の取り組みが注目を集めている。「ビジネスと人権に関する指導原則」が発表されて以来、各国で企業がサプライチェーンにおける人権問題に関する情報開示を促す法律が成立、施行されている。しかし、日本には企業にサプライチェーンの人権デューディリジェンス(児童労働を含む)を促すような法律はなく、また公共調達においてもそのような観点は含まれていない。
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国内では子どもの貧困が7人に1人という現状の中で、児童労働の増加が懸念される。しかし、日本は「最悪の形態の児童労働に関する条約」(ILO第182号)を批准しているもの、批准国に求められている「国内行動計画」を策定していない。また、児童労働問題を一括して所管する部署はなく、児童労働者数も把握されていない。
【NAPへの提言】
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日本が批准しているILO138号(最低年齢)、182号(最悪の形態の児童労働)条約の順守、および労働基準法や児童買春・児童ポルノ禁止法などの現行法では十分に対応できていない児童労働について法整備を行うことを明記する。
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日本政府による持続可能な公共調達へのコミットメントを示し、グリーン購入など環境面だけでなく、児童労働を含む人権にも配慮した公共調達を実現するための法律制定の検討についても言及する。
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企業のサプライチェーンにおける人権デューディリジェンスを促す法整備についても検討する必要性を言及する。
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国内においても、子どもの権利を奪うような児童労働が存在することを認識し、法整備、体制整備、行動計画策定、実態調査などの取り組みを明記する。
(認定NPO法人ACE、児童労働ネットワーク〔CL-Net〕)