【現状と課題】
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「ビジネスと人権」の取り組みは大企業が先行しているが、日本では7割近い人々(市民)が中小企業で働いており、その企業活動から人権への負の影響を受ける可能性(人権リスク)も、大企業よりも総体として大きくなる。このことが、市民社会として本テーマに言及する最も大きな理由である。
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中小企業は大企業のサプライヤーとしての位置にあることも多く、大企業のCSR調達の対象として、いわば一方的に「負担」を強いられる存在でもある。また、レピュテーションリスクや訴訟リスクなどの経営リスクにも中小企業は直面することになる。
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一方、中小企業に関わる既存の政策枠組みは多い。例えば「公正採用選考人権啓発推進員制度」では各都道府県レベルで中小企業への研修を行っており、幅広く人権に関わる問題を伝える場合も多い。「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」に基づく諸施策では企業への言及も多くみられ、地方レベルも含めて、教育や啓発を超えた「ビジネスと人権」に関わる内容が実質的には含まれている。
【NAPへの提言】
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「ビジネスと人権」は、大企業のサプライヤーとしてだけでなく中小企業自身の経営の課題、CSRの課題としても捉えるべきで、したがって今後のNAP策定プロセスにおいては、中小企業自身の声を聞き、実態を把握した上で国としての支援枠組みを検討するべきである。
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上記のような関連する既存の政策枠組みの影響は大きい。「ビジネスと人権」の普及、支援を図る際にも、こうした既存の政策枠組みとの整合性を図りながら、各省庁、地方公共団体を含めた「政策の一貫性」を重視することが必要である。
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人権の捉え方に混乱がみられることから、「政策の一貫性」には人権の捉え方の一貫性も含まれるべきである。
(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター〔ヒューライツ大阪〕)
2018.11.25
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