「ビジネスと人権」に関する行動計画の原案に対する意見
国際環境NGO FoE Japan 開発と環境チーム
[意見1]
(該当箇所:第2章)
1.行動計画の基本的な考え方
(5)司法的救済へのアクセス確保に向けて努めるだけでなく,個別法令に基づく相談窓口(労働者,障害者,消費者等や,(株)国際協力銀行(以下,「JBIC」という。ガイドライン及び(独)国際協力機構(以下,「JICA」という。)環境社会配慮ガイドラインに基づく異議申立手続きや「OECD多国籍企業行動指針」に係る日本連絡窓口(以下,「日本NCP」という。)等,複数からなる非司法的救済に関する取組を活用していく。
・意見内容
上記該当箇所を以下のような文言に修正していただきたい。(太字・下線部が修正・追記箇所)〔※「太字・下線部」→「太字」。以下同様。〕
司法的救済及び非司法的救済へのアクセス確保に向けて努める。また、個別法令に基づく相談窓口(労働者,障害者,消費者等や,(株)国際協力銀行(以下,「JBIC」という。)ガイドライン、(株)日本貿易保険(以下,「NEXI」という。)ガイドライン、及び(独)国際協力機構(以下,「JICA」という。)環境社会配慮ガイドラインに基づく異議申立手続きや「OECD多国籍企業行動指針」に係る日本連絡窓口(以下,「日本NCP」という。)等,複数からなる非司法的救済に関する取組について、関連機関・日本NCPの運用改善と体制強化を図っていく。
・理由
(A)非司法的救済措置のアクセスについては、現状、以下のような問題点が見られるため、司法的救済と並び、アクセス確保に向けた取組みが必要である。
(B)JBIC及びJICAと同様、NEXIもガイドラインに基づく異議申立手続の制度を有しているため、NEIXについても併記すべきと考える。
(C)非司法的救済に関する取組については、現状、以下のような問題点が見られるため、現在の「取組を活用」するだけではなく、「運用改善」と「体制強化」が重要であることを明記すべきと考える。
[意見2]
(該当箇所:第2章)
2.分野別行動計画
(2) 人権を保護する国家の義務に関する取組
イ. 開発協力・開発金融
開発協力の適正性を確保すべく被援助国の基本的人権の保障を巡る状況に十分注意を払うことを定めている。
・意見内容
上記該当箇所を以下のような文言に修正していただきたい。(太字・下線部が修正・追記箇所)
開発協力の適正性を確保すべく被援助国の基本的人権の保障を巡る状況に十分注意を払うことを定めており、その運用を適切に行なう。
・理由
開発協力大綱に定められているにもかかわらず、以下のとおり、基本的人権の保障を巡る状況に問題が見られるなか、JICAが円借款供与を続けている事例が見られるため、開発協力大綱に「定めて」いるという点だけではなく、開発協力大綱の「適切な運用」を行なっていくという点を明記すべきと考える。
[意見3]
(該当箇所:第2章)
2.分野別行動計画
(2) 人権を保護する国家の義務に関する取組
イ. 開発協力・開発金融
<具体的な措置>
開発協力・開発金融分野における環境社会配慮に係る取組の効果的な実施
・意見内容
上記該当箇所(4点の箇条書き)に以下のような文言を追記していただきたい。
・理由
JBICはガイドラインに則り、企業による人権配慮の確認を行なうこととなっている。また、財務省はJBICの所管省庁として、JBICがガイドラインに則り適切に環境社会配慮確認を行なうよう監督する義務がある。これは、JICAに対する外務省、および、NEXIに対する経済産業省についても同様と言える。しかしながら 、少なくとも弊団体がこれまでにモニタリングしてきた以下のような複数の案件における経験から、人権侵害のケースに係るJBIC、JICA、NEXIによる精査の方法やその判断は適切なものとは言えず、また、財務省・外務省・経済産業省の監督は不十分であると言わざるをえない。したがって、3機関及び3省庁の能力・体制強化について、具体的に明記すべきと考える。
[意見4]
(該当箇所:第2章)
(4) 救済へのアクセスに関する取組
<具体的な措置>
(ウ) 「OECD多国籍企業行動指針」に基づく日本NCPの活動の周知とその運用改善
・意見内容
上記該当箇所を以下のような文言に修正していただきたい。(太字・下線部が修正・追記箇所)
(ウ) 「OECD多国籍企業行動指針」に基づく日本NCPの活動の周知とその運用改善及び体制強化
・理由
(A)少なくとも、弊団体が問題提起に関わった2案件(問題提起者の代理・支援を含む)では、初期評価および斡旋中に現地踏査等は行なわれないままで、調査の質に疑問が残るものであった。また、日本NCPは、経産省・外務省・厚労省という政府機関のみから構成されており、現在、日本NCP委員会等は、個別の問題提起案件に対して何ら権限を有していない。したがって、今後、以下のような措置の検討がなされるべきであることから、「体制強化」について、上記該当箇所に明記すべきと考える。
(B)日本NCPの手続手引では、目安の処理期間として、初期評価は3ヶ月、斡旋は6ヶ月と記載されているが、少なくとも、弊団体が問題提起に関わった案件(問題提起者の代理・支援を含む)では、手続きの明確な遅延理由も示されぬまま、受理通知の発行から初期評価の完了までに9~10ヶ月かかった事例があった。また、その後の斡旋についても、NCPから定期的な連絡もないまま、「当該企業が対応を検討中」ということを理由に、初期評価完了から今日まで4年弱、手続きに何ら進展のない事例がみられる。同事例では、初期評価が完了する前に、問題提起者が当初要望した解決策はすでに実現不可能なものとなってしまった。このような実態から、「日本NCPが当事者による問題解決を支援するための役割を果たしている」とは評価していない問題提起者がいる。したがって、「問題提起者にとって実効性のある救済手段」であるべき点、また、「迅速性」について、明記すべきと考える。
(C)少なくとも、弊団体が問題提起に関わった2案件(問題提起者の代理・支援を含む)では、日本企業の関わるビジネス行為に伴い、深刻な人権侵害を受けている現地住民(農民や漁民)の存在が確認されていたが、彼らが自分自身で、日英で書かれた日本NCPへの問題提起手続きを理解し、日英で文書を準備し提出することは不可能な状態であった(NGOの支援が必要であった)。また、日本NCPは設置されているものの、日本NCPに問題提起された案件、および、日本NCPが手続きを完了した案件は、欧米のNCPに比べると件数が少ない。したがって、「アクセス確保の改善」について、明記すべきと考える。
[意見5]
(該当箇所:第2章)
2.分野別行動計画
(4) 救済へのアクセスに関する取組
<具体的な措置>
(カ) 開発協力・開発金融における相談窓口の継続
・意見内容
まず、箇条書きの3点目として、NEXIの環境ガイドラインと異議申立手続きに関する文言を追記していただきたい。
また、上記該当箇所(箇条書き4点目)を以下のような文言に修正していただきたい。(太字・下線部が修正・追記箇所)
・理由
JBIC及びJICAと同様、NEXIもガイドラインに基づく異議申立手続の制度を有しているため、NEIXについても記述/併記すべきと考える。
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