【現状と課題】
-
裁判所による司法的救済の他、労働審判、法務省の人権侵害救済手続等が存在するが、言語・管轄等の点から、日本在住の外国人被害者や日本企業又はそのサプライヤーにより引き起こされる国外での人権侵害等には十分に対処できていない。
-
パリ原則に準じた国内人権機関が存在しない。
-
OECD多国籍企業行動指針の日本連絡窓口(NCP)が設置されているが、2012年以降に終了した案件はわずか5件にとどまる。NCPの手続手引における目安の処理期間は、初期評価に3ヶ月、支援の提供に6ヶ月とされているが、実質的な現地調査や斡旋手続等も行われないまま数年に渡り手続が進まない事例もあり、こうした実態は外部からは見えず不透明である。また、NCPは経産省・外務省・厚労省という政府機関のみから構成されており、日本NCP委員会は個別の申立案件に対して何らの権限も有していない。問題提起者からは、日本NCPは当事者による問題解決を支援するための救済ツールという役割を果たしているとは評価されていない。
【NAPへの提言】
-
NAP策定においては、既存の国家基盤型の救済手続を、国連指導原則(原則31)が定める要件に照らして評価すべきである。
-
民事法律扶助の対象を日本国外に在住する人権侵害の被害者にも拡大する、民事法律扶助を通じた通訳・翻訳のサポートを拡充するなど既存の国家基盤型の救済手続の利用への障壁を下げるべきである。
-
パリ原則に準じた国内人権機関を早期に設立するべきことをNAPで言及していただきたい。
-
NCPが問題提起者にとって実質的に効果のある問題解決/救済ツールとなるよう、役割やプロセス等の再考が必要であることをNAPで言及していただきたい。同時に、NCPの説明責任、透明性、独立性を向上すべきである。具体的には、初期評価の公開や、申立案件の担当者に、学者・弁護士・企業関係者・労働組合関係者・NGO関係者等の外部ステークホルダーを起用・関与させることが考えられる。また、人的・財政的リソースを拡充して迅速な救済を可能にすべきである。さらに、NCP自らが現地調査を含む実質的調査を行える態勢を整備し、調停手続に当事者が応じない場合等には、OECDガイドラインの違反の有無についての判断を示すことを可能にするべきである。
(国際環境NGO FoE Japan)
(認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ)
2018.11.25
→NAPへの提言:目次へ