【現状と課題】
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国連指導原則が求める企業の人権デューディリジェンスの仕組みづくりの中で、日本企業も苦情処理メカニズムの構築を進めつつあるが、企業の事業活動が人権に与える負の影響を早期に特定し、是正を可能にする仕組みとはなっていない。
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多くの企業は、コンプライアンス通報制度やサプライヤーホットラインなどを通じて、社内外からの通報・相談を受け付けている。しかし、国連指導原則が求める要件は満たしておらず、人権に負の影響を受ける人たちが利用できるものにはなっていない。
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特に人権に負の影響を受けやすい脆弱な人たちが信頼して利用できるよう、言語・識字能力を考慮してメカニズムの設計や周知がなされているか、報復の恐れがないか、苦情処理プロセスの内容や所要時間が明示されているか、進捗状況が通知されているか、といった観点を考慮し、実効性や透明性、公正性を確保することが課題である。
【NAPへの提言】
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企業による非国家基盤型の苦情処理メカニズムは、国家基盤型の司法的および非司法的苦情処理メカニズムを補完・強化するものであり、まずは国家基盤型のメカニズム構築を迅速に進めることをNAPに明記すべきである。
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非国家基盤型の苦情処理メカニズムは、企業の事業活動によって負の影響を受ける個人および地域社会にとって、経済的負担が少なく、アクセスが容易で、迅速な解決を可能にするものでもある。人権に負の影響を受けるステークホルダーとの協働による非国家基盤型のメカニズムの構築について、政府が企業を支援することを求める。
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特に、日本企業の製品やサービスと関わりのある深刻な人権問題を早期発見・解決するためにも、国家基盤型および非国家基盤型の苦情処理メカニズムを相互に機能させる必要がある。
(公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本)
2018.11.25
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