日本政府は、2025年7月に開催される国連閣僚級ハイレベル政治フォーラム(HLPF)において、2021年に続き3回目となるSDGs進捗報告書「自発的国家レビュー(VNR)」を発表します。
政府とSDGs推進円卓会議民間構成員によって作成されたVNR案に対するパブリックコメントが、3月19日(水)から4月18日(金)まで募集されていました。
ビジネスと人権市民社会プラットフォームは、「自発的国家レビュー(VNR)」の政府報告書案に、下記の点を含めることを提案しました。
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VNR報告書案では、「ビジネスと人権」に関する政府の取り組みとして、日本企業の進出国政府に対する行動計画の策定・実施支援や、日本企業とそのサプライヤーを対象とした研修・セミナーについて報告されており、こうした海外における取り組みは評価される。一方で、2024年5月に発表された国連ビジネスと人権作業部会の訪日調査報告書が指摘するとおり、「ビジネスと人権」に関する国内の浸透が不足している状況を受け、特に地方自治体や中小企業、経済団体等の関連主体が、ライツホルダーの視点を持つ労働組合、市民社会、地域社会の代表、人権擁護者等との対話を通じて、指導原則と行動計画を十分に理解できるよう、周知を図ることについても示して頂きたい。
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2021年のVNRにおいて報告された「ビジネスと人権に関する行動計画」について、その策定と2025年に改定が行われる旨は言及されているものの、現時点での「行動計画」の取り組み成果のとりまとめや改定プロセスについては、より詳細に示していただきたい。特にNAPの達成度合やインパクト評価を示す客観的、定性的・定量的な指標設定、人権侵害に直面した脆弱なグループ※などのライツホルダーを含む様々なステークホルダーとの関与・対話は極めて重要であり、VNR報告書でも明記頂きたい。
※女性、LGBTQI、障害者、先住民族(アイヌ民族)とマイノリティ(在日コリアン、被差別部落出身者など)、子ども、高齢者、下請け事業者の労働者、外国人労働者、エンターテイメントに従事する人々等
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国連ビジネスと人権作業部会の訪日調査報告書の指摘も踏まえ、ビジネスと人権の取り組みを加速化させる人権デューディリジェンスの「法制化」や国内人権機関の設置の検討について明記頂きたい。また、企業が負の影響を引き起した際の救済について、現状その存在が十分に知られていないOECDの「連絡窓口」(NCP:National Contact Point)の実効性を確保するための体制整備と機能強化についても言及を求めたい。
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「ビジネスと人権」に関する国別計画改定骨子案に「環境と人権」が含まれていることから、「清潔で健康的かつ持続可能な環境への権利」を踏まえ、SDGsが目指す包括的なアプローチとして、人権の観点から気候変動・生物多様性を含む環境の取り組みの強化が必要であることを明記頂きたい。また、VNR報告書案でも言及されているGX政策の下で推進されるカーボンクレジット制度において、対象プロジェクトによる人権への負の影響を防止し、救済へのアクセスを確保する必要性について言及頂きたい。
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紛争影響地域での事業活動については、SDG目標16が示す争いのない平和な社会の実現に向けた国家の義務及び企業の責任が問われることから、紛争影響地域で実施されるODA事業を含む事業活動の人権デューディリジェンスの強化の促進についても言及頂きたい。
詳細は、SDGs市民社会ネットワークより提出している「SDGsスポットライトレポート2025」の「ビジネスと人権ユニット」の提言(pg.60-62)をご参照頂きたい。
https://www.sdgs-japan.net/single-post/sdsgspotlightreport2025